ごきげんよう
watowaさんの畑の向こう 2024/8/17
=洞窟おじさんのつづき=
新たに洞穴生活が始まり、食べ物探しに夢中になっていると、枯れ木を拾っている老夫婦に出会し、何年かぶりに『人』を見たせいか心臓が爆発しそうになります。驚き声も出ず身体が丸くなったままいると、おばさんが『これをお食べ』と差し出されたものは、黒い三角形と黄色いものが乗っていた。おにぎりとたくあんです。小学生の頃は麦飯のおにぎりだったので、憧れのおにぎりが目の前にあります(´∀`)腹一杯に頂いて、その御礼に枯れ木を集めて家に届ける様になりました。ある日、おじさんは手に赤い紙を握らせました。キョトンとしてその赤い紙をじっと見ているので、おじさんは怖い顔になりましたが『あんちゃん、百円札だぞ、知らないのか?』と言いました。少年が百円札をおじさんに返すと、おばさんが察して『みんな持ってお行き』とおにぎりやおもちやお菓子を両手いっぱい抱えて渡してくれました。数日して、次はお風呂に入れてもらい、おじさんは湯船に浮かぶ垢にも気にするなと声を掛け髪の毛も洗ってくれました。フワフワのお布団も、いつも、草の上で寝ていたので、寝ようとしても眠れないのです。それ以来、おじさんとおばさんの手伝いをしながら一緒に暮らす様になりました。
そんなに長くは続かなかったのです。近所の人が『あの子は誰だ』と朝も昼も家の周りに集まりジロジロ見ていきました。おじさんは気にするなと励ましてくれましたが、おばさんの顔から笑顔が消えていきました。『僕がこの家にいるからおじさんとおばさんに辛い思いをさせる』。少年は家を出ていく事を決心しました。『僕は山が好きなのでやっぱり山に帰ります』と、本当は一緒にいたかったけれど、おじさんとおばさんに辛い思いをさせては行かないとボロボロ泣きながら別れました。おじさんは黙ったまま着替えと、たっぷりの食べ物を詰め込んだリュックサックを差し出し背負わせてくれました。また、山の生活が始まります。
この話題が広まり、日本のみならずアメリカ、イギリスのメディアが取材に来て、山を下りられることになります。中学生から43年間のサバイバル洞窟生活を終えて、今は群馬県山中の障害者支援施設に勤務して、施設の修繕修理やブルーベリー畑の栽培を任されています。ブルーベリーはビー玉ほどの大きさで甘くて評判となり、全国各地から注文が殺到し収穫、発送の手続きで大忙しなんだそうです。
2024/8/16 by tayu